要 請 書

2005年11月7日

 

厚生労働大臣 川崎二郎 殿

 

ハンセン病市民学会        

                          共同代表 和泉 眞藏・内田 博文

                               鎌田   ・國本

訓覇   ・神 美知宏

                                   志村  ・徳田 靖之

                                     牧野 正直

 

 10月25日東京地方裁判所民事第38部は、台湾楽生院入所者に対するハンセン病補償金不支給処分の取消しを命じました。同じ日、同じ東京地方裁判所の民事第3部は、韓国小鹿島更生園入所者に対する同処分取り消し請求を棄却する判決を言い渡しました。

 同じ日、同じ法廷で、同じ請求をもって行われた訴訟にまったく正反対の判決が言い渡されたことによって、世論が一斉に憤りと疑問の声を挙げたことは周知の通りです。

 こうした世論の声となってこだました常識は、まさに正鵠を得ているものです。熊本の温泉宿泊拒否事件を経験し、私たちはこの国にハンセン病に対する差別と偏見がまだ深く残っていることを痛感致しました。しかし、25日の2つの判決を契機にして、私たちは、2001年熊本地裁判決の時全国に沸き起こった判決への熱い支持の声が決して弱まっていなかったということを確認できました。

 台湾楽生院東京地裁判決「控訴を断念すべし」、この声は、熊本地裁判決を受け容れた時の声となんら変わりがありません。行政府も立法府も、こうした国民の声を聞き、国民の声に沿って、自らの責任を果たすことが求められているはずです。

 かつまた、我が国のハンセン病政策は、熊本地裁判決を契機に、控訴を断念したり、ハンセン病補償法を議員立法したに留まらず、「ハンセン病問題に関する検証会議」を設置し、戦前からの日本のハンセン病政策そのものを植民地で行われたことを含めて淵源から問い直すことに着手したはずです。そして、検証会議が多くの労力を注ぎ込んで本年3月に公表した報告書には、韓国ソロクト・台湾楽生院で行われたハンセン病発症者に対する絶対的強制隔離政策が日本の植民地政策の一翼を担うものとして行われた結果、国内にも匹敵するかそれ以上の苛烈でかつ皇民化を伴う二重の人権侵害が存在した事実が明記されています。

 この報告書は、前厚生大臣が「尊重する」と明言したに留まらない、私たち国民が等しくハンセン病理解のための出発点として共有すべきものです。「控訴しない」ということこそが、国民と国が等しく熊本地裁判決を重く受けとめ、ハンセン病差別の被害者の救済とハンセン病政策の精算とそして二度と差別を繰り返さないために行ってきた一連の行動の帰結に沿うものであるはずです。

 

 上記の理由に基づき、以下の点につき、厚生労働大臣に強く要請するものです。

1 台湾楽生院東京地裁判決に対しては控訴をせず、速やかに判決の趣旨に添うこと。

2 速やかに「告示」を改正し、小鹿島更生園、台湾楽生院 入所者も補償法による支  給対象となることを明確にすること。

 

 

厚生労働大臣あて要請書